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平成12年 不当労働行為事件命令集より(東京地方労働委員会事務局編集)

命   令   書


申立人  東京都台東区蔵前四丁目6番8号
       全国福祉保育労働組合東京地方本部
       執行委員長  茂 木 初 子
被申立人 東京都小平市上水南町四丁日7番1号
       社会福祉法人東京サレジオ学園
       理 事 長   村 上 康 助


 上記当事者間の都労委平成11年不第59号事件について、当委員会は、平成12年11月7日第128回公益委員会議において、会長公益委員沖野威、公益委員藤田耕三、同渡辺章、同吉田豊、同中村茂八郎、同松井清旭、同佐野陽子、同明石守正、同岩潮孝、同古郡柄子、同中嶋士元也、同伊藤眞の合議により、次のとおり命令する。

主          文 

1 被申立人社会福祉法人東京サレジオ学園は、交渉員の人数を3名以内とすることに固執することなく、申立人全国福祉保育労働組合東京地方本部が申し入れた組合員Sの児童指導員への復帰にかかる配転問題の団体交渉に応じなければならない。

2 被申立人学園は、本命令書受領後1週間以内に、下記内容の文書を理事長の記名捺印をして申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、東京サレジオ学園管理棟正面入口の見やすい場所に 10日間掲示しなければならない。


                     記


                              年  月  日
全国福祉保育労働組合東京地方本部
執行委員長 茂 木 初 子 殿

                   社会福祉法人東京サレジオ学園
                      理 事 長 村 上 康 助

 当学園が、貴組合からの組合員Sの児童指導員への復婦にかかる配転問題の団体交渉申入れについて、貴組合の規約の不備を理由に、また団体交渉の交渉員数を3名以内とすることに固執して団体交渉に応じなかったことは、東京都地方労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)


3 被申立人学園は、前各項を履行したときは速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。



理        由

第1 請求する救済内容

1 披申立人は、申立人が平成11年4月21日付、同月28日付及び5月6日付で申し入れた組合員Sの配転間題に関する団体交渉を拒否しないこと。
2 謝罪文の交付及び掲示
3 当委員会に対する履行報告

第2 認定した事実

1 当事者等

(1)被申立人社会福祉法人東京サレジオ学園(以下学園という。)は、昭和21年に設立され、乳児を除いて、保護者がいないなどの理由で養護を要する児童を入所させて、これを養護することを目的とする児童養護施設である。学園には、2歳から20歳までの約110名の園生が、くすの舎(いえ)など7つの舎に起居しており、それぞれの舎には4、5名の職員が配置されている。本件申立時、施設長としての野口重光園長(以下「野口園長」 という。)外、正職員45名、非常勤職員数名がおり、職員は、有資格の児童指導員,無資格の児童指導員、保母、栄養士、調理人、事務職員等である。
(2)申立人全国福祉保育労働組合東京地方本部(以下「組合」という。)は、昭和63年2月に結成され、社会福祉及びこれに関連する事業に携わる労働者などが組織する労働組合であり、申立外全国福祉保育労働組合に加盟し、本件申立時の組合員数は、約1,900名である。
 学園の児童指導員S(以下「S」という。)は、平成11年4月、後記配転命令を契磯として組合に加入し、組合の下部組織 である北多摩第2支部に所属している。

2 Sに対する配転命令

(1)厨房への配転命令
@ Sは、昭和56年3月、学園に採用され、児童指導員(当初は無資格、58年からは有資格〉として勤務している。そして平成4年4月以降、くすの舎に配置されていた。
A 学園は、Sに対し、11年2月23日、4月1日から厨房での調理業務に従事させる旨を命じた。Sは辞令の撒回を要求するとともに、配転理由を明らかにするよう求めたところ、野口園長は「3月8日に文章で回答する。」と約束した。
B しかし、3月8日、野口園長は、「2月23日付の辞令は撤回します。4月1日から施設長付きとして卒園生の世話に当たって下さい。」との辞令を交付した。
C ところが、3月11日、野口園長は、職員全体会の10分前にSを呼び出し、「3月8日の辞令は撤回します。やはり厨房に行ってもらいます。」と告げ、辞令を交付した(以下「厨房配転」という。
なお、組合はこれを「不当配転」と称している。)。そして、職員全体会で配布された「平成11年度職員配置」には、Sの欄には「調理」と記されていた。
(2) 配転命令に対する抗議
@ Sが学園に対して、厨房配転の理由を文書で回答するよう求めたところ、学園は、3月21日付で「学園の業務の都合のため」、「辞令は学園の業務上の必要から諸事情を勘案して出すものであり、本来、職員に相談、打診の必要のないものです。」と文書で回答した。
A Sは、学園に対し、代理人名義で3月23日付文書により、配転辞令の撤回要求と同問題に関する交渉を同月27日に行うことを申し入れたが、学園は、同月26日付で「Sは児童指導員として相応しくないので、業務上の理由・必要性から配置転換をしたものであり、この件についての交渉には応じられない。」と代理人に回答した。
B Sは、4月以降厨房での業務に従事した。

3 組合の団体交渉申入れと学園側の対応

(1)組合の団体交渉申入れ
 11年4月、Sは組合に加入し、組合は、同月21日付文書で、学園に対して、Sの組合加入を通告するとともに、「組合,員Sに対する『不当配転』をやめ、ただちに児主指導員としてくすの舎に就労させること」を要求し、同時に組合、北多摩第2支部及びSの3者連名で、同内容を交渉事項とする団体交渉を申し入れた。
 以後、団体交渉申入書・要求書など組合から学園宛の文書はすべてこの3者連名で発信されている。
(2) 学園の回答
学園は、4月26日付で、以下の内容を記載した回答書を組合に郵送した。
ア Sの配転の件は、同人が東京地方裁判所八王子支部に申請した仮処分事件の結果を待ちたい。
イ Sの配転に伴う労働条件について変更はない。
ウ 堤出された貴組合規約は、労働組合法に抵触しており、不適法であるので検討してほしい。
エ 学園は、適法な団体以外とは団体交渉をするわけにはいかない。
(3)組合規約の不備をめぐるやりとり
@ 組合は、4月28日付文書で、上記学園の回答書に対して「正当な理由なく経営者は団体交渉を拒否または引き延ばすことはできません。」などと抗議するとともに、上記(2)ウのr不適法」の内容を明確かつ具体的に指摘するよう求め、同時に、改めて同日付で、Sの不当配転の撤回に関する団体交渉を申し入れ、併せて5月4日を期限とする文書回答を求めた。
A 5月6日、組合は、学園から同月4日までに回答がなかったので、電話で回答を催促したところ、学園は、「貴団体が労組法上適法な団体であることを明らかにされましたら、学園は交渉日時、その他をお知らせします。」とファクシミリで回答した。組合が再度電話で「労組法何条に抵触しているのか。」と問い質すと、濱口秀昭副園長(以下「濱口副園長」という。)は、「それはあなた方でお調べ下さい。」と述べた。
B 重ねて組合は、5月6日付で団体交捗拒否に対する抗議文、団体交渉申入書及び要求書(Sの就労条件について)を学園に持参して濱口副園長に手渡し、同月8日までに回答するよう求めるとともに、これ以上不誠実な対応をするなら労働委員会へ救済を申し立てざるを得ないことを伝えると、濱口副園長は「わかりま   した。」と答えた。
C しかし、学園は、回答指定日を過ぎた5月9日付文書で、「適法な団体以外と交渉するわけにはいきません。・・貴団体が団交を望むのであれば(労働組合法に抵触していることについて)貴団体の責任においてご検討し改訂して下さい。」と、従前と同様の回答をした。
 また、学園は、この文書に、「要求が2団体からありますが、交渉の主体も明らかにしてください。二重交渉には応じられません。」と記した。
D 5月28日、組合は、当委員会に本件不当労働行為の救済申立てを行った。

4 Sの配転にかかる仮処分決定と学園の対応

(1)東京地方裁判所八王子支部の仮処分決定と組合の対応
@ Sは本件申立てに先立つ11年4月6日、東京地方裁判所八王子支部に配転命令効力停止の仮処分を申し立てた。同支部は7月27日、Sに対する厨房への配転命令について、職種を専門職といえる児童指導員に限定した労働契約に反するとして、「厨房における調理人としての勤務を命じる旨の配置転換命令に従う雇用契約上の義務を負わない地位にあることを仮に定める。」との、Sの要求を認容する決定をした。
 なお、本件結審時、仮処分決定は確定しているが、同事件の本案訴松が同支部に係属している。

A 仮処分決定後の7月30日、組合は、「学園は仮処分決定に従い、組合員Sに対する『不当配転』をやめ、ただちに児童指導員としてくすの舎に就労させること」などを内容とする団体交渉の申入れを行った。しかし、学園は9月13日付文書で、団体交渉については組合規約が法に基づき改正されることを待って回答する、と従前と同様の回答をした。
(2)Sの仮配転命令
 9月20日、学園は仮処分決定を受けて、Sに対して以下の内容の「仮の配転」(以下「仮配転」という。)を命じた。
     「配置場所 かやの舎 〈かやのいえ〉リビング
      職務内容 @依頼された卒園生の世話(アフターケア業務)
              A依頼されたテーマについて研修し報告する
              B依頼された業務を行う
      勤務形態 @公休日は土曜日
              A中出勤務(10時〜18時)とし、うち2日は6時間勤務とする」
     なお、かやの舎は園生が起居している7つの舎とは別の建物である。

5 団体交渉実施に至る経緯

(1) 組合規約の改正
@11年7月8日及び8月3日の当委員会調査期日に、学園は当委員会に対し、組合規約の改正が組合大会で決定されれば団体交渉を実施すると述べた。

A組合は、9月11日、12日の組合大会において、規約改正、同盟罷業開始の各要件等について組合規約を改正した。
(2) 団体交渉の実施
@ 第1回団体交渉に至る経緯
ア 組合の前記7月30日付団体交渉申入れに対し、学園は、9月13日付文書で、「二重交渉」の問題について組合からまだ回答がないので、交捗に先立ち文書で明らかにすることを求めた。これに対して、組合は、9月16日付文書で、支部は組合の下部組織で日常の活動単位であり、団体交渉権は単位組合である組合にあり、「二重交渉」にはあたらないと回答した。同時に、組合規約は大会で改正済みであることを伝えた。

イ 9月16日の当委員会調査期日に、組合と学園は、次回期日(11月10日)までに2、3回の団体交渉を行うことで合意した。これを受けて、組合は、同月21日付文書で、「仮配転の内容解明及び不当配転(厨房配転)」などを交渉事項とし、交渉員のほかに記録員を出席させる旨の団体交渉を申し入れ、併せて、同日付けで、要旨以下5項目の要求書を提出した。
  1. Sの仮配転の内容について
     児童指導員の専門性が発揮できるかを検討するための職務スケジュール、卒園生の世話の具体的内容とSの日常業務スケジュール、研修の目的とその内容、依頼された業務の具体的内容等を明らかにすること
  2. Sに対する不当配転を撤回し、児童指導員としての専門性が発揮できる職務にただちに戻すこと
  3. 職員や子供との交流を阻害しないこと
  4. 職員や子供との接触を不当に禁止しないこと
  5. 労使正常化のための労使基本協定の締結について
A これに対して、学園は、9月28日付で交渉員を「組合、学園双方共3名以内」とする団体交渉開催要領を組合宛に送付した。同文書には、「未だに組合は交渉主体を明らかにしていないのは甚だ遺憾である。」と記載されていた。さらに、組合は、10月4日付文書で、組合側は5名出席する旨を伝えた。これに対して、学園は、同日付で、「貴文書は、9月28日付団体交渉要領に対し受諾されていない。受諾されない場合は、当日の団交は開催しない。」と通告した。
 そこで組合は、一刻も早く労使関係の正常化とSの仮配転を含む配転問題の解決を図るために3名の人数制限を受け入れて、10月8日に第1回団体交渉が実施されることとなった。
 なお、本件審問で学園は、交渉 員について、組合員がS一人であり、内容的にも3名で十分な話合いが持てたと述べ、一方、組合は、最少でも学園を担当する組合の役員、地域の活動単位である支部の代表者、専門分野である児童養護の関係者及び当事者を交渉員とし、他に記録員等が必要であったと述べた。
B 第1回団体交渉
ア 10月8日、第1回団体交渉には、組合は、高橋睦美組合書記長、國米秀明組合書記次長及びSが、学園は、濱口副園長(理事〉 と関口幹子、鳥巣悦美の両職員が交渉員として出席した。
 学園は、席上、組合の9月21日付要求書に対する後記内容の10月8日付回答書を手交するとともに、Sの配転理由については児童の主体性を重視する方針と本人の適性を考慮したこと、厨房配転については訴訟の結果を待ちたいと述べた。そして組合が、学園の内部組織で、アフターケアの方針等を決定するアフターケア部会へのSの出席を求めたところ、学園は、アフターケアの内容は経済的困窮、対人関係の不良など種々の問題を含み、緊急に少数で判断することが多いので部会の開催は少ないが、決定事項は濱口副園長がSに伝えると回答した。
 また、組合が仮配転先に机、ワープロ、電話、書庫等の備品を要求したところ、学園は持ち返って検討すると答えた。さらに、学園は、職員や子供との接触の禁止などは一切ないと説明した。
 なお、組合要求書に対する学園の回答書の内容は以下のとおりである。

  1について(仮配転について)
    業務・職務については学園において決定し、直接、職員に指示・伝達します。
  2について(不当配転について)
    不当配転ではありません。従って撤回はしません。
  3、4について(職員や子供との交流・接触の禁止について〉
    いずれも学園において決定することであります。
  5について(労使基本協定について)
    別紙協定を締結する意思はありません。また、労使関係は正常であります。
    もし、正常でないとの主張をされるのであれば、貴組合並びに組合員において惹起された裁判並びに労働委員会への申立を取り下げられたい。 (以下略)
イ 以上のようなやりとりの後、組合は学園に対し、「Sの児童指導員としての専門性をどう発揮させようと考えているのか、Sの職務を制限しようとする理由、アフターケア部会へのSの出席問題、上記仮配転先における備品はどのくらい準備できるのか」など5点について改めて明確な文書回答を行うよう求めた。
これに対し、学園側は、同月18日までに文書で回答すること及び同月下旬に再度団体交渉をすることを約束した。

C 第1回団体交渉後の学園の対応
ア 上記第1回団体交捗後、学園は、10月16日付回答並びに申入書で「交渉の結果、お互いの主張が平行線で終わりました。従って、次回交渉を行っても意味のないことと考えますので、組合において事情変更があれば交渉を再開するに吝かではありません。」と回答した。また、組合からの前記5点の質問については、「いずれも業務・職務に関することであります。従って、貴宛て10月8日付回答書第1項をもってすでに回答したとおりであります。」と回答した。

イ そこで組合は、10月20日付要求書で、組合側は団体交渉に最少でも5名が出席することを表明し、学園に対しては、複数の理事が出席すること及び上記5点の質問に対する再回答を要求するとともに、第2回団体交渉の開催を申し入れた。
 これに対して、学園は、同月27日付回答書で、「10月16日付回答を変更する意思はありません。団体交渉は、お互い平行線で終わっておりますが、貴組合において事情変更があれば、交渉を再開するに吝かではありません。」と従前と同様の回答をした。

ウ しかし、その後の11月1日に、学園は、出席者を「双方共3名以内」とする同月5日の団体交渉開催通知を組合にファクシミリで送付した。組合は、交渉員を3名にするとその内の1人が記録を取ることとなり、交渉に集中できない不都合はあるが、このことを我慢して、同月2日付で学園の通知を受諾した。

D 第2回団体交渉
 11月5日、第2回団体交渉が開催された。出席者は、学園は前回と同じであり(5(2)B)、組合は高橋睦美書記長に代わり、浅利晋組合副執行委員長が出席した。
  席上、学園は、Sが現在担当するアフターケア部会の内容やこの業務の重要性などを説明し、改めて同人の職務・業務は学園が決めることであると述べると同時に、Sにアフターケア以外の業務に就かせることは考えていないと述ペた。また、学園は、Sの仕事について問題点の具体的な指摘があれば交渉するとも述べた。
E 第2回団体交渉後の学園の対応
11月10日の当委員会調査期日において、労使双方は、次回期日(12月16日)までに団体交渉を1回行うことで合意した。そこで組合は、11月12日付で、9月21日付要求書及び第1回団体交渉の「確認事項」(5点の質問に対する文書回答)に基づき、Sの職務・業務を議題とし、出席人数を組合側5名とする団体交渉を申し入れた。
 また、組合は、12月1日付で「Sの不当配転について、少なくとも仮処分の決定に従い、ただちに児童指導員としての専門性が発揮できる職場にもどさなければならない。」と抗議するとともに団体交渉を申し入れた。
 しかし、学園は、11月24日付及び12月10日付文書でそれぞれ「10月8日及び10月16日等の回答を変更する意思はない、また第1回及び第2回団体交渉で、お互いの主張は平行線で終わっています。貴組合において事情変更があれば、交渉を再開するに吝かではありません。」との趣旨の回答を行い、11月10日の合意を積極的に履行しようとしなかった。

6 交渉員をめぐる労使の折衝

(1)第3回団体交渉に向けた折衝
@11年12月16日の当委員会調査期日に、組合は、当委員会事務局職員立会いの団体交渉を申し出たが、学園はこれを拒否し、12年1月18日に、当事者間で第3回団体交渉を行うことで合意した。
A その後、第3回団体交渉開催のため、労使双方の代理人間で事前に交渉事項の調整をし、1月13日、組合は、交渉員を5名以上出席させるとした上で、Sに対する仮配転の意図及び理由などを議題とする団体交渉申入書と児童指導員としての専門性が発揮できる職務に従事させることなどを内容とする要求書を送付した。これに対し、学園は、団体交渉の場所及び「従来通り双方共3名以内。当事者以外出席しない。」などを内容とする団体交渉開催要領を送付した。
 翌14日、組合は、「組合員3名と代理人の出席」を付記した団体交渉受諾の回答をしたが、学園は15日付文書で、「貴文書は、学園の開催要領に対し受諾されていない。受諾されない場合は、当日の団交は開催しない。」と通知した。
 組合は、同月17日付文書で、上記学園の通知を受諾できない旨通知し、これに対して、学園は、同日付文書で「1.再び受諾されなかったため、団交は開催しない。 2.予め団体交渉の日程を決めていたにも拘わらず、組合は・・一方的に(開催要領の)変更を強要・強行しようとしております。 3.労働委員会では団体交渉の日時のみ決めたもので他については合意していない。」などと回答して、結局1月18日の団体交渉は実施されなかった。

(2) 交渉員をめぐるその後の折衝
@ 一方で学園は、上記1月17日付及び2月7日付文書で、開催要領は従前通り双方共当事者3名以内とした上で第3回団体交渉開催を申し入れたが、組合は、今回の団体交渉が不成立に終わったのは、学園が「12月16日の地方労働委員会の話合いのなかでも確認した代理人の立会い」を覆して団体交渉を拒否しようとしたためであり、第3回団体交渉開催については基本的に受諾するが、労働委員会の場で開催要領を確認した上で実施すべきであると文書で抗議した。

A 2月16日の当委員会調査期日に、組合は、最少でも「交渉員3名と代理人」の計4名が出席することを希望した。一方、学園は、「代理人が出席する場合でも合計で3名以内」と主張し、その後の3月10日の当委員会調査期日においても、学園の主張は変わらなかった。これに対し、組合は、学園の主張は受け入れられないと表明し物別れに終わった。

B その後、学園は、3月17日付で交渉員を「双方3名以内。当事者以外は出席しない。」との条件で、組合要求に対する回答を議題とする団体交渉申入れを行った。
 これに対して、組合は、上記申入れは、労働委員会の場で学園が認めた「代理人の出席」を無視する形で一方的になされたものであり、学園の態度が改善されない限りは、当委員会において事態の改善を図っていきたい旨を回答した。
 なお、本件が結審に至るまで、11年11月5日の第2回団体交渉以来、組合と学園との間で団体交渉は実施されていない。

7 Sの仮配転先での業務実態

 Sが仮配転先で命じられたアフターケア業務とは、入所者の退所後の自立支援として、さまざまな援助を求める卒園生の世辞をすることであり、12年4月現在、同人が従事するアフターケア業務は、週に2日程度あり、それ以外の日は待機となる。同人は最初に40歳代、50歳代の卒園生、その後に20歳から25歳前後の卒園生合わせて6、7名の世話を指示された。しかし、学園はSに対して、当初に命じた研修や業務の依頼はしていない。
 なお、仮配転以降もSの労働時間や賃金は変更されていない。

第3 判 断

1 当事者の主張

(1)申立人の主張
@ 学園は、組合の厨房配転に関する団体交渉申入れに対して、組合規約の不備が是正されれば団体交渉を実施すると回答したが、組合に不備な点を指摘もせず、「あなた方でお調べ下さい。」などと不誠実な対応に終始して、団体交渉を拒否する口実として規約の不備を挙げ、現に団体交渉を拒否し続けた。
 また、学園は、組合と北多摩第2支部が連名で団体交渉を申し入れたところ、「二重交渉」には応じられないと主張し、組合が交渉主体は組合にあることを表明した後にも、交渉主体を明らかにしないのは遺憾だと異議を述べて、交渉を拒否するロ実とした。

A 本件申立後、学園は団体交渉の開催の条件として、労使とも交渉員を3名以内とすることを迫り、組合はやむを得ずこれを受け入れた。第1回団体交渉で学園は、組合の質問に対する文書回答と11年10月下旬に第2回団体交渉を行うことを約束した。ところが学園は、質問事項は既に回答済みである、また、次回交渉を実施しても意味がないと回答して、約束を反故にした。その後、第2回団体交渉は開催されたものの、学園は一貫して交渉員を労使とも3名以内とする条件に固執し、組合がこの条件を受け入れない限り継続して団体交渉を実施しないとの態度をとり続けている。

(2)披申立人の主張
@ 学園が組合規約の検討を申し入れたのは、交捗相手である組合が労働組合法に適合する労働組合であることが望ましいと考えたからであって、団体交渉を拒否する趣旨ではない。規約が適法に是正されれば団体交渉を行うと事前に回答し、現に規約改正後に団体交渉を実施しているのであるから、学園の対応は不誠実とはいえず、団体交渉拒否にもあたらない。

A 学園が交渉員を労使とも3名以内としたのは、組合員がSだけであること、議題の内容からも十分対応できると考えて提案したものである。因みに、実施した2回の団体交渉では、3名以内とすることを組合と合意しており、3名としたことによって特段の支障もなかった。また、たまたま組合が学園の開催要領を受諾しなかったときは、予定の日に団体交渉ができないというに止まり、交渉しないという趣旨ではないのであるから何ら不当なものではない。
 なお、組合は第1回団体交渉で約束した文書回答と第2回団体交渉の実施を学園が守っていないと主張するが、10月16日付で約束の文書回答を行い、現に第2回団体交渉も実施しているのであるから、約束を反故にした事実はない。

2 当委員会の判断

(1) 団体交渉拒否理由の当否等について
@ 組合規約の不備等について
ア 学園は、11年4月21日付、同月28日付及び5月6日付組合の団体交渉申入れに対し、いずれも組合規約の不備を理由に「適法な団体以外とは団体交渉をするわけにはいかない。」などと回答し(第2.3(2)、同(3)A及び同C)、また、組合からの不備の点に関する問合せに対して、「貴団体の責任においてご検討し改訂して下さい。」などと回答して(第2.3(3)C)、組合規約が改正された後の同年10月までの5か月余りにわたり団体交渉を実施しなかったことが認められる。

イ 学園は、組合親約の不備を理由に団体交渉を拒否したものではないと主張するが、「適法な団体以外とは団体交捗をするわけにはいかない。」と回答しており、規約が改正されるまで団体交渉を行わないことを表明したものといえる。しかしながら、労働組合の規約に労働組合法第5条第2項に適合しない箇所があるからといって、そのことのみをもって、使用者は当該組合との団体交渉を拒否できるものではないから、本件組合の規約不備が団体交渉の正当な拒否理由となるわけではない。加えて組合が規約を改正するまでの学園の対応は、不備の内容を示唆することもなく、ことさらに突き放す対応をしていることからすれば、学園が規約の不備を理由に挙げたことは、団体交渉拒否のための口実とみるほかなく、その主張は採用できない。

ウ なお、学園は、二重交渉にあたることも問題としていた経過もあるが(第2.3(3)C)、組合の団体交渉申入れは、同一組合の上部と下部の機関が一体となって同一の団体交渉において、同一の議題を協義する趣旨であるから、二重交渉とはいえないことは明らかである。

A 団体交渉の交渉員の制限等について
 学園は、交渉員を3名としたことは提案であって、学園の提案が受諾されないときは予定日の団体交渉だけが実施されないに過ぎず、団体交渉をしない趣旨ではないと主張する。
 しかしながら、本件における学園の対応は、結局のところ、交渉員は3名以内という学園の一方的な決定を組合が受諾しない限り、団体交渉の開催には応じないとするものである。事実、学園は、団体交渉を実施するにあたり、交渉員の人数について「労使双方共3名以内」にこだわり続け、結局、組合がやむを得ずこれを受け入れた2回の団体交渉だけに応じた(第2.5(2)A、同Cウ)。また、組合がいわゆる大衆団交を構えることなく、5名程度という常識的な人数を希望し、後に4名に譲歩しても、学園はこれをも受け入れようとしなかった(第2.6(1)A)。
 また、学園は、組合が組合側の交渉員を5名又は4名とする旨を記載した団体交渉受諾の通知をすると、その都度、組合の申し出た交渉員の人数を捉えて予定日の団体交渉は開催しない旨の回答をする(第2.5(2)A、同6(1)A)ことによって、団体交渉を拒否したと同じ事態を生じさせている。
 以上のように学園は、団体交渉の開催に関する折衝の過程で何ら具体的かつ合理的な理由を示すことなく、交渉員を3名以内とすることに終始こだわり、学園の提示した条件を受諾しなければ団体交渉を開催しない姿勢を一貫してとり続けたのであるから、上記学園の主張は到底採用することができない。
 なお、第1回団体交渉において、学園は、組合の5点の質問に対する文書回答及び10月下旬に第2回団体交渉を実施する約束をした(第2.5(2)Bイ)にもかかわらず、その後第1回団体交渉をもって双方の主張が平行線に終わり、次回の交渉をする意味がないとか、単に10月8日付回答に尽きるとの文書回答を行っている。(第2.5(2)Cア、同イ)。しかし、第1回団体交渉はいわば交渉の入り口であって、その後に第2回団体交渉を開催し、第3回団体交渉の日時まで一旦は合意していたことを併せて考えれば、学園の文書回答は交渉を尽くした結果とは到底いえず、このような学園の対応には、Sの処遇については、学園自身が決定すればよい問題であるとして、団体交渉の議題とすることを回避しようとする意図が窺える。
B結論
 結局、学園が当初において、組合規約の不備を理由に、組合からの11年4月21日付、同月28日付及び5月6日付申入れの団体交渉を拒否したこと、また、その後、団体交渉開催に当たっては、具体的かつ合理的な理由を示すことなく交渉員を3名以内とする条件に固執し続けたことは、Sの処遇に関する組合との継続的な団体交渉の開催を回避する意図をもっとなしたものであると判断され、正当な理由のない団体交渉拒否にあたることは明らかである。
 なお、学園は、12年1月17日付など3回にわたってSの配転に関する団体交渉を申し入れている(第2.6(2)@、同B)が、いずれも交渉員は3名以内とすることを条件としていることは明らかであるから、上記判断は変わらない。

(2)本件団体交渉拒否からの救済方法について
 当初、Sの厨房配転に関する11年4月21日付の団体交渉申し入れに対する学園の対応が不当労働行為にあたるかが争いであったところ、前記第2.4認定のとおり当委員会係属中に東京地方裁判所八王子支部の仮処分決定に基づき、Sに対する仮配転命令という新たな事態が生じた。このため組合が、Sの厨房配転の撤回を求める上記団体交捗申入れを維持しつつも、当面の緊急課題であるSの仮配転問題の早期解決を目指して、この問題にかかる団体交渉を申し入れたことは自然ななりゆきである。したがって、本件団体交渉拒否からの実効性のある救済をするには、Sの厨房配転問題のみならず、その後に生じた同人の仮配転問題の解決も図るための団体交渉の実現を考慮し、主文第1項のとおり命ずることとする。

第4 法律上の根拠

 以上の次第であるから、学園が、組合が申し入れた組合員Sの配転問題に関して、組合規約の不備を理由に団体交渉を拒否したこと、また団体交渉の交渉員を3名以内とすることに固執して団体交渉を拒否していることは、労働組合法第7条第2号に該当する。
 よって、労働組合法第27条及び労働委員会規則第43条を適用して主文のとおり命令する。


   平成12年11月7日

                          東京都地方労働委員会
                             会 長 沖 野  威